May 14, 2012

禁断

仮眠中に、疲れる夢を見た。

どうやらマラソンをしていたのだが、駅の中に設置された給水所で、何故かずらりと並べられたストレートのアブサンをひたすら利き酒する羽目になるという(笑)

夢だから酔わないのだが、そうであってもあまり大量に飲みたくは無い酒である。
恐らく先日行ったBARの結構な品揃えが印象深く、夢に出たのだろう…


「禁断の酒」とも呼ばれたアブサン(アプサン、アブサントとも云う)、要は薬草リキュールのようなもの。
ニガヨモギの中毒症状で製造禁止にもなった曰わく付きの酒。19世紀ヨーロッパの芸術家には愛好家が多く、ゴッホが自身の耳を切り落としたのはこの酒による幻覚症状のせいとする説もあるらしい。



現在出回っているものは当時の味を再現したに過ぎず、原料が違うので人体に危険を及ぼすような成分は含まれていないそう(笑)
しかし独特な香りと味に度数も高く、かなり好き嫌いの分かれるものかと思う。
わたしは、以前に元祖ペルノーのアブサンのスタンダード(アブサント・スプーンに乗せた角砂糖に水を注ぐスタイル※画像参照)を戴いた。
個人的に嫌いな味でもなかったが、期待し過ぎたせいか1杯飲んだら充分という感じ。

確かに、麻薬じみた印象は受けた。

凄く珍しいものかと思っていたのだが、意外とオーセンティックの店では普通に飲める(笑)


期待し過ぎた…というのは、これが(また映画ネタになるが)わたしが学生の頃から大好きだった映画に印象的な小道具として出てきていたからだ。




早熟の天才詩人アルチュール・ランボーとポール・ヴェルレーヌの禁断の恋の逃避行を描いた「太陽と月に背いて」
またしても芸術家同士の恋愛だが、此方は男色に不倫に年の差カップルという禁断の極み。妻に放火して逃亡、痴話喧嘩から発砲騒ぎ、そして関係が発覚し投獄…熱病で脚は切断するわ、散々な展開。

わたしの中ではディカプリオの最高傑作と確信しているが、あまりに壮絶な内容のせいか評価がいまいち。所謂「巧い子役」から脱却して、透明感と色気がない交ぜになった少年期の終焉近く、熟れた美少年とでも言おうか、そんな強烈な魅力を放っていた時期(実年齢20歳超えていたが)。
此方も作品の影響で「地獄の季節」を読んだが、非常に過敏で生き難い魂という印象を受けた。
ディカプリオの演じるランボーは、激しさ、奔放さ、純粋過ぎるが故に背徳意識に捕らわれぬそれが、時に悪魔的なまでのゾクッとする妖しさを感じさせる。
彼が爆発的に売れる直前の作品だが、散々ちやほやされていただろうあの時代に、こんな映画に出たのは凄い。ヨーロッパ映画特有、無闇とヌードも多く体を張っている(マニアックだが肩甲骨でワインのコルクを開けるシーン、あの森の中での一連の流れが結構好きだったりする)。

対するヴェルレーヌ役のデヴィッド・シューリスは、ディカプリオとのコントラストのせいで哀愁ばかり際立つが、心の弱さや歪んだ愛情表現がランボーに共通する。

亡き恋人の幻と微笑み交わすラストはじわじわと泣けるのだ。手の平をなぞるナイフ、遠い昔衝動的に刃を立てたそれに優しく接吻をするランボー。それはアブサンの見せた幻覚だったのだろうか…?
風を受けながら海へ向かうディカプリオをバックに、「永遠(L'Eternite)」の朗読を聞かすのも憎い演出。


…長くなったけれど(笑)、
2人がよく出向いていた酒場で飲んだのが、アブサン。




アブサンに水を注ぎながら「氷を溶かす〜」と芸術家の在り方云々についてヴェルレーヌが語るシーンがあるが、そのせいでわたしはスプーンの上に乗せるのは砂糖ではなく氷なのだとずっと信じていた。


アブサンが溶けた砂糖と色を変えながら混ざる様子と、「永遠」の有名な一節は恐らく作品の中で意図的に掛けられていたのだと思う。


Elle est retrouvee.
Quoi? - L'Eternite.
C'est la mer allee
Avec le soleil.

[見付かった。
何が?−永遠が。
太陽を溶かし込んだ、海だ。]

作中の訳はこんな感じだったかと…


芸術家の愛した、
グラスの中の禁断の「永遠」。
なんともドラマティックではないだろうか?


…しかしまぁ、グイグイ飲む酒では、無い(笑)


幻の緑酒・アブサン
アルチュール・ランボー初期作品解説(原文&ヴェルレーヌのイラスト付)


◇所属劇団◇
幻想芸術集団 Les Miroirs

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alf_maria_lully at 04:21│Comments(0)TrackBack(0)

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